コラム最終更新日:2025年1月14日
令和7年税制改正大綱では、個人所得課税に関する控除額の変更が注目されています。これらの変更は、物価上昇局面への対応や「103万円の壁」を緩和し、就業調整を促進することを目的としています。本コラムでは、今回の改正内容の概要とその影響について解説します。
※本コラムの内容は作成日時点の税制改正大綱に基づき記載しています。今後の与野党の協議により変更となる可能性があります。
今回の改正により、所得が2,350万円以下の個人を対象に基礎控除が10万円引き上げられます。これにより、基礎控除額は現行の48万円から58万円に増額されます。ただし、所得が2,350万円を超える場合は段階的に控除額が減少し、2,500万円を超えると控除が適用されなくなります。
また、給与所得控除の最低保障額も現行の55万円から65万円に引き上げられ、所得税と住民税の両方に影響します。
基礎控除と給与所得控除の引き上げに伴い、配偶者控除・配偶者特別控除および扶養控除の所得要件が見直されました。控除対象となる配偶者や扶養親族の所得要件が現行の48万円以下から58万円以下に引き上げられるほか、新たに導入される「特定親族特別控除」では、19歳以上23歳未満の扶養親族を対象に、合計所得金額が123万円以下であれば最大63万円の控除を受けられるようになります。
これらの改正は、控除を受けられる範囲を広げるだけでなく、控除額を逓減方式で調整することにより、就業調整の抑制や家庭への経済的支援を強化する狙いがあります。
具体的な適用スケジュール
これらの改正は令和7年分の所得税から適用され、源泉徴収は令和8年1月から反映される予定です。また、住民税については令和8年度分以降に適用されます。
まとめると…
・これまでは103万円を超える給与収入があれば所得税が課税されていたが、123万円までは所得税がかからなくなる。(扶養控除の所得要件も同様)
・19~22歳の扶養親族であれば、給与収入が150万円以下までは特定親族特別控除として扶養控除を受けることができる。
特にパートタイマーやアルバイト従業員を多く雇用している小売業や飲食業などの中小企業にとって、今回の改正は労働環境や就業調整に大きな影響を及ぼします。また、控除額が変わることにより、年末調整や源泉徴収業務が複雑化する可能性があります。そのため、改正内容を従業員に正確に説明する、給与計算ソフトを最新版にアップデートしておくなどの対応が必要となります。
弊社(税理士法人杉井総合会計)では、これらの改正に対応した従業員への説明方法や年末調整業務のサポートを提供しています。税制改正の影響を受ける中小企業経営者の皆様は、ぜひお気軽にご相談ください。
【コラム執筆者】
社員税理士 杉井秀伍