コラム最終更新日:2024年11月13日
従来のM&Aにおいて、候補先を探すためのマッチングは、専門の仲介業者に依頼するのが主流でした。しかし、近年ではインターネットを活用したネットマッチングや、売り手側または買い手側のいずれか片方を支援するFA業者(フィナンシャルアドバイザー)の増加により、マッチングの方法が多様化しています。どちらの方法にもメリットがあり、重視するポイントに応じて適切な方法を選択することが重要です。
仲介業者がマッチングを行う場合、仲介業者は売り手企業の情報を詳細に分析し、自らのネットワークを駆使して候補先に対し提案活動を行います。この方法は、仲介業者が積極的に買い手企業に提案を行い、ニーズに合致する相手を見つけだす「提案型マッチング」といえます。
一方、ネットマッチングやFA業者が行うマッチングでは、売り手企業の匿名情報を専門のマッチングプラットフォームに掲載し、もしくはFA業者に対して情報を共有し、そこから買い手企業を募集します。この方法では、情報を掲載し、候補先が自らアプローチしてくるのを待つ「掲載型マッチング」といえます。
提案型マッチングでは、仲介業者のネットワークに左右されます。大手の仲介業者であれば豊富なネットワークを持ち、多くの候補先から選ぶことができますが、ローカルな仲介業者ではネットワークが限定されるため、対象となる候補先の数が限られることがあります。
掲載型マッチングでは、インターネットを活用して広く情報を発信できるため、理論上は全国を対象にマッチングを行うことが可能です。
マッチングの正確さや成約率に関しては、提案型マッチングが優れている場合もあります。仲介業者は、売り手企業の詳細な情報を把握し、個別に提案を行うため、ニーズに合った候補先を見つけやすくなります。
一方、掲載型マッチングでは、インターネットに掲載された限られた情報を基に候補者が申し込むため、実際にマッチングが成立しても、想定した内容が実態と異なることがあります。そのため、成約率は提案型マッチングに比べて低くなることもありますが、スピード感がある点で有利です。
提案型マッチングでは、M&Aプロセス全体を含めて、すべてのステップが人手で行われるため、マッチングから成約までに時間がかかることが多いです。一般的には、少なくとも6ヶ月以上の期間が必要です。手間と時間がかかるため、全体的なスケジュールが長くなる傾向があります。ただし、提案型マッチングの利点は、仲介業者が常に候補先を探し続けることで、最適なマッチングを実現できる可能性が高いという点です。仮に6ヶ月以上の時間がかかったとしても、成約の可能性は十分にあります。
また、提案型マッチングでは、人件費や交通費などがかさむため、手数料は高額になりがちです。多くの仲介業者では、最低報酬として一定の手数料を設定しており、その額も比較的高めに設定されています。しかし、手数料が高い分、仲介業者が提供するサービスの質や成約率の高さが保証されることが期待できます。
一方、掲載型マッチングでは、インターネットを活用するため、マッチングのスピードが非常に速いという特徴があります。平均的には4ヶ月程度でマッチングが完了し、場合によっては1週間ほどで適切な候補先が見つかることもあります。インターネットを利用するため、手数料は比較的安価であることが多く、低コストでマッチングを行いたい場合に適しています。
ただし、掲載型マッチングは長引くとマッチングプラットフォーム上での案件の入れ替わりが激しくこともあり、時間が経つほど成約の可能性が低くなる傾向があります。
提案型マッチングと掲載型マッチングには、それぞれ異なる特徴があり、どちらを選択するかはM&Aを行うにあたって何を重視するのかによります。また、M&Aの専門家に依頼する際にはどのような方法で候補先とマッチングを行うのか事前に確認しておくとよいでしょう。
当社では、自社内でのサービス提供に加え、大手仲介業者との正式提携により、提案型マッチングと掲載型マッチングのどちらにも対応しています。ぜひご相談ください。
【コラム執筆者】
社員税理士 杉井秀伍
プロフィール:2016年4月より1年間、大手M&A仲介会社に出向、中小企業M&A業務の実務を経験する。その後税理士法人杉井総合会計にて税理士登録。日本最大のネットマッチングサイト「バトンズ」にて2020年ベストアドバイザー賞を受賞。
保有資格:税理士、M&Aシニアエキスパート
支援実績等:学習塾事業・調剤薬局事業・旅客運送事業・金属加工業 等