M&Aにはどんな費用がかかりますか?

コラム最終更新日:2024年7月30日

事業承継・M&AコラムM&Aに関するQ&A

実際にM&Aを進めようとした場合、どのような費用や税金が発生するか気になる方が多いでしょう。なんとなく高そうというイメージを持たれている方も少なくありませんが、M&Aにかかる費用(コスト)は、譲渡側と譲受側で異なります。ここでは、それぞれの立場でかかる費用について整理してみましょう。


譲渡側にかかる費用

専門家報酬

M&Aを自社のみで進めていくことは現実的ではなく、たいていの場合、M&A支援を行っている専門家に支援を依頼することになります。専門家報酬は、M&Aが成立した際に発生する成功報酬型がほとんどです。成功報酬は、会社の総資産金額や譲渡価格に一定割合をかけて計算するレーマン方式が一般的ですが、支援専門家によっては着手金や中間報酬、成功報酬に最低金額が設定されていることもあります。そのため、事前にHPなどで情報を収集しておくことが望ましいでしょう。

譲渡収入に伴う税金

譲渡側はM&Aに伴って譲渡収入が発生するため、税金がかかります。株式譲渡であれば譲渡所得となり、譲渡収入から取得価格を差し引いた額に対して20.315%の譲渡所得税と住民税が課されます。また、株式譲渡ではなく役員退職金として受け取った場合は、退職金控除の金額を控除した額の2分の1が退職所得となり、所得税・住民税がかかります。M&Aによる譲渡収入をどのように受け取るかにより、譲渡側オーナーの手取り額が大きく変わることがありますので、通常は譲渡側オーナーの手取りを加味しながら交渉を進めていきます。

譲受側にかかる費用

専門家報酬

譲渡側に専門家がついていて、その専門家が仲介する形でM&A支援を行っている場合、譲受側も同様の専門家報酬が必要となります。

買収監査(デューデリジェンス)費用

M&Aの最終契約前に、譲渡側企業の内容を精査し、最終的な取引価格や条件の調整、M&Aの可否を決定する手続きが行われます。これを買収監査(デューデリジェンス)といいます。デューデリジェンスには財務・税務に関する事項がメインとなりますが、案件によっては人事労務、法務、ビジネス内容に関するデューデリジェンスを行うこともあります。近年ではデューデリジェンスを省略してM&Aを進めるケースも見られますが、これはリスクが高く、推奨されません。


専門家報酬を省略することは可能か?

近年では、インターネットでM&A案件情報を掲載・検索できる「M&Aマッチングプラットフォーム」が普及しており、専門家を使わずにM&Aを行う環境が整ってきています。実際に専門家が介在しない案件が成約する事例もありますが、この場合、専門家報酬は発生しないものの、マッチングプラットフォームの利用手数料が発生します(主に譲受側が負担することが多いです)。

 

ただし、専門家を一切使わずにM&Aを進めることには大きなリスクが伴います。以下のような点でリスクが発生する可能性があります。

 

- 契約書の作成や条件交渉における法的な問題の発生

- デューデリジェンスの不足による買収後のトラブル

- 譲渡価格の適正な評価が行われないリスク

- 交渉過程での誤解やコミュニケーション不足による取引失敗

- 秘密保持や情報管理の不備による情報漏洩リスク

 

最低限、譲渡側であれば具体的な相手方が見つかってから最終調整を依頼する、譲受側であればデューデリジェンスのみを依頼するなど、要所要所で専門家を活用することが望ましいです。

まとめ

M&Aにかかる費用は、譲渡側と譲受側で異なることを理解し、適切な専門家の支援を受けながら進めていくことが重要です。費用を抑えようとするあまり、必要な手続きを省略してしまうと、後々大きなトラブルに発展する可能性がありますので、注意が必要です。M&Aを検討される際は、ぜひ専門家のアドバイスを受けながら進めてください。


【コラム執筆者】

社員税理士 杉井秀伍

プロフィール:2016年4月より1年間、大手M&A仲介会社に出向、中小企業M&A業務の実務を経験する。その後税理士法人杉井総合会計にて税理士登録。日本最大のネットマッチングサイト「バトンズ」にて2020年ベストアドバイザー賞を受賞

保有資格:税理士、M&Aシニアエキスパート

支援実績等:学習塾事業・調剤薬局事業・旅客運送事業・金属加工業  等


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