DDとは何ですか?DDは必要ですか?

コラム最終更新日:2024年7月30日

事業承継・M&AコラムM&Aに関するQ&A

M&Aおいて「DD(デューデリジェンス)」とは何でしょうか?また、なぜ必要なのでしょうか?これらの疑問に対して、DDの意味とその重要性について詳しく説明していきます。

デューデリジェンスとは

一般的な中小企業M&Aでは、最終契約の前段階で買い手が自身の費用負担で売り手企業を調査する手続きが行われます。これをデューデリジェンス(通称DD)といいます。中小企業の決算書は、主に税金を計算するために作成されていることが多く、財務会計に基づいた実態とは異なる場合があります。また、法律、特に会社法や労働法関係の整備が曖昧な部分があり、これがM&A後のトラブルとなるケースも少なくありません。そのため、DDは最終的な譲渡価額や条件の調整だけでなく、M&A自体を進めるかどうかを判断する上で重要な手続きといえるのです。


DDで調査される内容

DDの調査項目は、案件の規模や依頼者の要望によって異なりますが、一般的には財務内容に関する調査(財務DD)や法務に関する調査(法務DD)が実施されます。例えば、以下のような項目が調査対象となります。

 

- 会社の概要やビジネスフロー

- 株主構成や過去の株主変遷

- 労務管理の実態(未払い残業代がないかなど)

- 実体のない資産や簿外債務が存在しないか

- 事業の収益力の実態

- M&Aに影響を与える要素がないか

DDの目的・意義

DDの目的は一言で言えば「リスクの明確化」です。DDによって判明したリスクに対して、譲渡価額の調整やスケジュールの調整、契約内容の見直しを行うことができます。例えば、決算書に実体のない資産が計上されている場合はその分譲渡価額を調整し、M&Aにあたって事前承認が必要な契約がある場合はスケジュールを調整して必要な手続きを行うことができます。また、労務管理が曖昧で未払い残業代が発生する可能性がある場合は、表明保証事項に明記することが重要です。


表明保証条項とは?

表明保証条項とは、売主が買主に対して記載している事実が真実かつ正確であることを保証するものです。一定期間内に表明保証内容が真実でないことが発覚し、買主に損害が生じた場合、売主は損害賠償に応じなければならないとする条項です。


ここで一つ疑問が浮かぶかもしれません。契約書に表明保証条項と損害賠償の規定があるなら、わざわざDDを行う必要はないのではないか?という点です。しかし、M&Aにおいて表明保証条項はDDとセットで用いることが基本であり、表明保証条項のみに頼る対応は注意が必要です。その理由は以下の通りです。

 

1. DDを行わずに表明保証違反を立証するのは難しい場合があります。最低限、買主が確認すべき事項を怠ったと判断されると、損害賠償請求ができない可能性があります。

2. 表明保証違反による損害賠償請求を行っても、相手側が損害賠償に応じない、もしくは金銭的に対応できない可能性があります。事前にDDでリスクを把握し対処しておく方が、はるかに負担が少ないです。

3. 表明保証違反による問題が金銭で解決できない場合、損害賠償で対応できないリスクが生じます。


DDのもう一つの意義:PMIに向けた準備

DDを行うもう一つの意義として、M&A後の取り組みがしやすくなるという点があります。M&A後の統合(PMI)では、買い手側が売り手企業の現状を把握し、自社の方針を定めて実行に移す必要があります。この現状把握をDDで行っておくことで、PMIの取り組みもスムーズに進めることができます。これをプレPMIと呼ぶこともあり、事前にDDで実態把握を行うことが、M&A後の成功に繋がります。


まとめ

DDは単なる調査手続きではなく、M&Aの成否を左右する重要なプロセスです。小規模案件であってもDDを省略することなく、しっかりとリスクを把握して対処することが、成功するM&Aの鍵となります。また、DDを行うことで、M&A後の統合プロセスが円滑に進む準備が整います。

弊社グループではM&Aに関するサービスとして企業調査業務(DD業務)を取扱っております。DDの実施を検討されている場合はお気軽にお申し付けください。


【コラム執筆者】

社員税理士 杉井秀伍

プロフィール:2016年4月より1年間、大手M&A仲介会社に出向、中小企業M&A業務の実務を経験する。その後税理士法人杉井総合会計にて税理士登録。日本最大のネットマッチングサイト「バトンズ」にて2020年ベストアドバイザー賞を受賞

保有資格:税理士、M&Aシニアエキスパート

支援実績等:学習塾事業・調剤薬局事業・旅客運送事業・金属加工業  等


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